空に手が届きそうだ
「よし、次行こう。」

満足そうな、良子の声で一気に現実へと引き戻された。

「ヤバい……。楽しい。」

キャッキャと笑う風花には、さっきの面影が全くない。

まるで、子どものようだ。

(これが、風花の居る世界)

改めて、そう思う。

「優、大丈夫?」

風花が、自分のカバンを優からもらいながら聞いた。

「大丈夫。ただ…。」
「ただ?」
一瞬、言葉を見失った。
「凄いなって思った。」
「そうかな?」
ふっと笑うと、行こうと言って公園を出ようとする。
まだ、余韻が残っている良子に行くぞと声を掛けた。

「あっ、待ってよ……。」

急いで、カバンをひったくるとローファーでグランドをふみしめた。

優は、二人の後ろ姿を見ながら思う。

私の夢は、叶わないと。

見上げた空に手を伸ばしても、全く届かない。

「優~!!!!!!!」

公園の入口で、風花が大きく手を振る。
「早く行こう!!!!学校間に合わなくなっちゃう」

「すぐ行く~!!!」

ありったけの声で叫んだ。

頑張ろう。そう思って、カバンを掴んで二人の元へ行く。

空は、少しずつ笑い初めて太陽達が顔を出してきている。

「急ぐぞ。」

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