空に手が届きそうだ
信号が青に変わる。
行こうと、言って風花を置いて歩道を渡った。
「痛い……。」
少し痛む背中を気にしながら、走って追いついた。
「叩く事ないじゃん。」
良子の方を見ると、いい加減にしろと目で訴える。

「ごめん。」
しゅんとすると、良子もごめんと言った。

優が、お互い様やねとその場を繕う。

「それより、早く行ってせな時間ヤバいし。」

ポケットに入れっぱなしの携帯を見れば、もうすぐ七時四十分
「嘘。早く行ってしよ。」

狭い住宅街を縫うように歩く。
さっきとは、打って変わって家々が寂しそうだ。

「よし。するか。」
それを合図に、風花はぐっと気持ちを込める。

良子は、荷物をどかっと置いて、撮影する体制に入った。
優は、邪魔にならないように良子のずっと後ろの方へ下がる。
「向こうの、壁側に持たれる感じで立ってくれる?」
風花は、指示をされた所に立ってポーズを取る。
「風花。もうちょっと目線こっち!!!」

良子が、指示を飛ばすと風花が、即座に反応する。

古びた家々の間。
ただの道が、今は撮影場所。

何故か、風花が立つとぐっと雰囲気が変わってしまう。

(さっきまで、あんなにはしゃいでたのに……。)

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