空に手が届きそうだ
無機質な下駄箱が複数並ぶ昇降口に入ると、学校特有の雰囲気に少し胸が痛くなる。
廊下が、五月蝿い。

自分の下駄箱に三人は、それぞれ向かう。
ちらほらと他の生徒も居て、少しだけしんどい。
「優、お昼も上?」
ローファーを脱ぎながら、良子が聞いた。
「う~ん……。多分。」
「わかった。」
優もローファーを半分脱いで、パールを取り出すと床に落して履く。
ほんの少し汚くなったローファーを下駄箱に入れた。

(大丈夫。)

教室が並ぶ廊下には大勢の人が居て、下駄箱で聞いた時よりも一段と五月蝿い。

「無理は禁物な。」
うんと笑って頷くと、良子が安心したように笑ってみせる。
「じゃあ、またあとで。」
そっと先に行く優を見て風花は不安そうに、無理しないでねと言った。

小さく頷いて良子達に手を振ると、前を向いた。


大嫌いな人の波。
古びた廊下は人が多く、ごちゃごちゃしすぎている。

人の姿を見て、気をつけて歩く。
短いスカートに、茶髪の少女の団体。
ズボンがずれ落ちそうな男子が、我が物顔で廊下を歩く。

かと思えば、大人しそうな男女のグループが、教室の入口に立って笑っている。

その中に、一際目立つ後ろ姿があった。
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