空に手が届きそうだ
嘘のような当たり前の日常
色の無い風が木々を揺らすのを見て、ため息を付く。
曇天の空に、光らない太陽を見上げながら大川優は思った。
(この世界壊れないかな……。)
ため息と共にマンションのベランダの扉を開けて、素足にスリッパを履いてベランダに出た。
小さく鳴く鳥たちの声に、幸せを感じながら洗濯物を干していく。
(冷たい……。)
まだ、月が出てほんのりと色づく空は優しい。
悴む手と戦いつつ、黙々とTシャツをハンガーに通して、竿に並べる。
今日言ったら、あと何日通えるのかな?
と、思っていたら家の柱時計が鳴る。
(ヤバい……。)
開けたままの扉から、時計を見ようと部屋を除く。
気づけば、時間ギリギリだった。
急いで靴下を干すと、空っぽになったカゴを持って部屋に入る。
少し、乱暴に脱ぎ散らしたスリッパをもそのままにしてずかずかと部屋を歩いた。
何も無い、ワンルームマンション。
そこにあるのは、必要最低限な家具と脱ぎ散らした洋服達だけ。
床には、さっきまで寝ていた布団が部屋の隅に、おいやられている。
足元には、化粧道具と提出しなくてはならない学校の書類が散らかっていた。
机には、落書きだらけの教科書類が散乱している。