空に手が届きそうだ
軽く、罪悪感を覚えながら、純一郎は守らなければならないと思った。

「あんま無理すんなよ。」
くしゃくしゃと、頭を撫でる。
と、ひゃっと言って、優は小さくなった。

「ちょっと、髪。」
ぱっと離れて、ゆっくり髪を直すが、すぐに純一郎の手にくしゃくしゃとされた。

「意味ねぇし。」
少しだけ離れて直すと、キッと睨んでみせる。
「お―怖っ。」

悪びれた様子も無く、愛しそうに優を見た。
「元気そうで何よりだ。」
ゆっくり、側まで行くと並んで街を見る。

「一時間目は、行かなくていいの?」
「多分、大丈夫じゃね?授業じゃなくて、文化祭の準備だし。
「えっ………。」
「明日だよ、文化祭。だから、授業無し。」
セーフと、野球の審判がするように手を動かした。
「嘘はいいから。」
「本当だっての。」
純一郎は、ポケットから、携帯を出してスケジュールの画面を取り出す。
ほれ、と言って優に見せた。
「あっ……。」
画面に表示されたカレンダーは、19日の所が赤く色づいている。
「嘘じゃなかっただろ?」

だだっ広い屋上に、二人の会話だけが響く。誰も、何も言わない。
ゆったりとした時間が勝手に過ぎていった。。

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