空に手が届きそうだ
「でな、」

♪チャンチャラチャン~♪

二人の会話を遮るように純一郎のポケットか携帯が鳴る。

―電話だ。

ごめんな、と言ってボタンを押す。

「もしもし」
『おはよう。』
「おはよう」
『優知らん?』
「知らん。」
『あっそ。』

と言って、電話は切れた。

「もう切っちゃっていいの?」
「怜だから」
と言うと、苦い顔をした。
「多分、かかってくると思う。優は?って言ってたし」

少しして、ポケットで携帯が震えた。

「怜?」
小さく頷いて、電話に出る。
「もしもし」
『もしもし。ごめんね優。朝から』
「ううん。おはよう。」
『おはよう』
「洋服の事だよね?」『そう。私は、優に頼みたいの。』
「でも……。」
『……部屋の前に、居るから』
と言って、一方的に切られた。

(怜ちゃん……。)

「なんだって?」
「部屋に来てって。」微かに震えた声。
「大丈夫か?」
俯きながら、小さく頷いた。
「大丈夫。」
行こう、と言って屋上を出る。
降りた階段は、やけに寂しい。
急に、声が増えて居る校舎。
怖い、声
響く足音
耳鳴りのする会話

「大丈夫か?」
「大丈夫。」
軽く、肩で息をしながらも階段を降りた。

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