空に手が届きそうだ
「いつもは、優の家でしょう?」
「うん。」
良子の言葉に返事しながら、手持ち無沙汰になった手をぶらぶらと揺らす。
「じゃあ、なんで?今日は深さん家なんだろ?」
「わかんない。」
ぶっきらぼうに、言ってしまう。
ジャリっと砂の音がする。
「ごめんね、皆。」
「なんで、謝んの?」
「だって……いっぱい心配かけたから。」

「気にしないの。」
「そっ、怜の言う通り。あたしらも、好きで優の話し聞いてんだからね。」
「ありがとう。」
明るい、皆の声に心が落ち着く。
無数にある、自転車。
その向こうの道路に、見慣れた車が止まっている。
「そこまで、送るから」
うん、と良子の声に頷く。
ただ、何も言わず皆が側に居る。
それだけが嬉しくて、自転車の並んである間を軽い足取りで、すり抜けるように歩いた。
「ありがとう。」
道路まで、出るとすぐに皆に手を振った。
「ん。じゃあね。」
口々に、聞こえる頑張れの声が嬉しい。
バイバイ、と手を振って車の方に向かった。

(大丈夫。)
運転席を覗くと、誰も居ない。
「あれっ?」
確か、この車のはず。
「遅い。」
せっかく出て待ってたのに、と車の後ろから声がした。
「ごめんなさい。」
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