空に手が届きそうだ
一瞬、車がふらつく。
「あぶねぇだろ?」
「ごめん。」
深は、前を見ながら、優の頭を軽く二回叩く。
「もうすぐ、着くから。」
「わかってる。」
「けっこう、姉貴優に会うの楽しみにしてたよ」
「来るのって蓮さんだけ?」
目の前に入っているMDを選びながら、聞いた。
「いや、彗ねぇや流も来る。」
信号で止まると、優の持っていたのと違うMDを取り出して入れた。
「何これ?」
「AKB」
再生を押すと、聞き慣れた流行りの曲が流れた。
信号が変わって、また走り出す車。
周りを、懐かしい景色が通り過ぎて行く。
「久々だよね、行くの。」
「本当だな。いつも、優ん家だしな。」
「ご飯ってどうするの?」
「これから買いに行く。」
と、近くのスーパーへ入った。
「私も、行かなきゃダメ?」
車を駐車場に止めて、出ようとする深に言った。
「何買っても、怒らないなら」
閉められた扉越しに、消えていく深。
(はぁ……。)
仕方なく降りようとすると、タイミングを見計らったように扉が開いた。
「行こう。」
屈託の無い言葉で、深が外へと促す。
「うん。」
ゆっくり、降りるとそっと手が繋がれる。
「迷子に、ならないでね。」
「わかった。」
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