空に手が届きそうだ
ひゅっと、後ろを小さな少女が通り過ぎようとして母親に止められた。
「ごめんなさい……って優ちゃん!?」
「あっ、葵先生。」
思わず、手を離した。
「何してんの?」
「買い物です。」
その手は、しっかりと少女の手と繋がれている。
「ママ、だぁれ?」
「ママの、教えてるお姉ちゃん。」
優は、少女の目線までしゃがんだ。
「こんにちは」
「こんにちは。」
「名前は?」
っと、葵が少女を促す。
「原口くるみです。」
「いつも、お母さんにお世話になってます。」
にこっと笑うと、くるみも小さくはにかんだ。
「あぁ居た居た。」
サンダルに、緩いTシャツ。だぼっとしたジャージを着た中年男性がこちらへ来る。
「あら、貴方。」

「えっ、先生の旦那さん?」
ゆっくり、立ち上がって頭を下げた。
「どうも。」
葵の隣に並ぶと、少し年が離れているように見える。
「彼女、あたしの教え子。」
ぺこりと頭を下げる。
「こっちは、旦那の龍太郎。研究者よ。」
「どうも」
「初めて見た。先生の家族。」
「で、こちらは?」
ちらっと、深を見た。
「初めまして。坂本深と申します。」
「日下部先生のお友達の?」
「流を知ってるんですか!?」
「えぇ。」
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