空に手が届きそうだ
―-……
-……
「どうぞ。」
マンションの廊下にある、一番端の扉を開ける。
優は、軽く頭を下げて入ると、懐かしい声がする。
(一人、多い?)
そう思いながらも、並んである靴に習って靴を脱いだ。
カタン、と扉が閉まる。
「ただいま~。」
白を基調とした部屋は何も変わってない。
突き当たりにあるドアの無い部屋からは、楽しそうな声がする。
乱暴に靴を脱いだ深が、先に部屋に入る。
そっと、優は脱ぎ散らかされた靴を直した。
「ったく、あんま飲むなっての。」

荒々しい声がする方に行くと、すっかり出来上がっている蓮が居た。
「優に、酒飲ますなよ。」
「わかってるって~。」
流と目があって頭を下げる。
鞄、と言われて深からスクールバックを預かった。
「適当に座ってて」
うん、と返事をして流の側に座る。
全く変わってない部屋。
深は、後ろに繋がっているキッチンに行くと、買ってきた物を冷蔵庫に入れた。
「流、お菓子。」
「動くの面倒なんだけどな」
と、言いながら渋々差し出された袋を受け取る。
「買い物してきたの?」
「なんも食べる物なかったし。」
「優、なんもされてない?」
酔っていたはずの蓮が心配する。
「大丈夫です。」
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