空に手が届きそうだ

『そう。怜も一緒よ』
よく、耳をすませば聞き慣れた声がした。
『深さん家？』
「うん。」
足音がして、振り向けば深が居た。
「脅かそうとしたのに」
後ろから、すっぽりと抱きしめられる。
『優～？』
「ごめん。」
『イチャイチャしないの。』
見透かされた感じが、怖い。
『それより、明日ごめんね。』
「ううん。仕方ないよ。こっちこそごめん。」
『なんで？』
「だって、学校で教室行かなかったから。」
『いいよ。仕方ない。』
「ごめん、ね。」
少し、寂しい。
無性に会って、話したくなった。
「ちょっと、待ってね。」
『うん。』
携帯を耳から離すと、深の方を見た。
「どした？」
「あのね、」
言いづらそうな、優の顔を見て笑ってみせた。
「どこ、行く？」
「良子んち。」
深は、頭をくしゃくしゃっとして、わかったと言った。
「もしもし、」
『聞こえてた。』
「ごめん、声おっきかったよね。」
『ううん、大丈夫。』
「ひゃっ。」
ちゅっ、と頬にキスが落とされた。
きっ、と睨むと悪びれた様子も無く離れていく。
『優？』
「あっ、何でもない。」
『じゃあ、どっかで待ってる。』
ちょっと待ってね、と言って会話が途切れる。