空に手が届きそうだ
「えっ、うん。」
バタバタと、玄関に行く。
「忘れ物は?」
「大丈夫。」
財布も、さっき入れた。
扉を開けて、光を入れてから電気を消した。
「ありがとう。」
「ん、」
当たり前のように、笑ってみせる。
「明日は、仕事?」
「まぁな。」
ガチャン、と扉が閉まった。
「行くぞ」
と、差し出された手。
「うん!!」
ぎゅっと、力強く握った。
   ***

「公園着いたら、連絡します。」
マンションの、下。深が、車を出した。
左右を、確認する。
「すくね、車。」
空からの道路に、車を滑らせる。
「携帯ばっか見てっと、酔うぞ。」
「うん。」
閉じた、携帯。
顔を上げれば、また違う景色が早足で通り過ぎて行く。
「公園着いたら、適当に時間潰すし呼んで」
「わかった。」
さり気ない優しさが嬉しい。
寂しい車の中、音楽と思ったがそんな気分でも無いらしい。
「深さん、」
「ん?」
「タバコ吸ってもいいよ。」
「臭いが服に付くから、送ってってからにする。」
どこまでも、優しい人。
「いつもありがとう。」
「ん。もうちょっと、ワガママでもいいぞ。」
「えっ、」
「言いたい事や、思ってる事は言えよ。」
「わかった。ありがとう」
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