空に手が届きそうだ

ふいに、静かになる。
「しんみりしないの。ちゃんと、喋って来たから」
空気を、明るくしようと元気な声で言う。
「明後日だっけ？」
恐る恐る、怜が聞いた。
「うん、明後日。」
明日、とは言えなかった。
「明日は、学校来るでしょう？」
「行く。良子の写真見たいし」
右隣に居る、良子を見て笑ってみせる。
「座ろう。」
屋根のある、小さな休憩スペース。机を挟んで両脇にあるベンチに二人ずつ座った。
「ってか、呼んで欲しかったな。」
「だって、優。深さんと会うって言ったから」
「ごめん。」
「また、泊まりにきなよ。そんな、遠くないでしょう？」
「車で、二時間かな？」
「遠いね。」
ちょっと、残念そうだった。
「それより、風花。明日、来ないんだって？」
「うん。みゆにね、急に呼ばれたの。明日撮影あるけど来ないかって」
「どんな、撮影？」
「雑誌の、表紙撮影。」
「なんか、凄いね。」
「私服は、あったけど表紙とかは全然だったからいい勉強のチャンスだって思ってね。」
まっすぐ、未来を見据えるその瞳は揺るぎない輝きを放つ。
「じゃあ、将来はモデルさん？」
「に、慣れたらいいけどわかんない。あたしみたいな人間は、山ほど居るから」