空に手が届きそうだ
「とりあえず、新しい環境に慣れて学校行って勉強して……。」
「教室、入れる?」
「わかんない。でも、頑張ってみる。」
「新しい環境なら、またリセット出来るしね。」
「うん、」
「それにさ、新しい出会いもあるしね。」
「だけどさ、深さんとは……。」
「会いに、来てくれるってさ。」
「うらやましい~。」
このこの、と良子が優を突っついた。
そのとたん、空気が柔らかくなる。
「あれ、優。光ってるよ。」
携帯は、紫に点滅していた。
「あっ、深さんだ。」
「相変わらずだね。」
「うん。優に携帯持たせてても、意味無いからね。」
ぷぅ~っと、頬を膨らませた。
「悪かったわね。」
「拗ねないの。それより、深さんいいの?」
「多分、大した事じゃないから。」
「いいから、早く見な。」
良子に、言われて仕方なく携帯を見た。
「あっ……。」
「どした?」
「ううん。何でもな。」
「ねぇ、写真撮ろっか?」
「うんっ、」
「記念写真撮ろっ。」
怜に促されて、行こうとしたが良子だけは浮かない顔だ。
「カメラ、無い。」
「カメラなら、優が持ってるでしょ?」
胸元に光る、携帯を指差した。
「そっか。」
納得したように笑ってみせた。
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