空に手が届きそうだ
いつもの事だから、と携帯に目を落とす。
手慣れたように、携帯をカメラにしてみせる。
「一枚、撮る?」
「うん。」
内部カメラにして、同じ位置に止まった。
「このくらいかな?」
カメラ写りを気にしながらも、優となるべく近くに顔を寄せる。
「撮るよ、」
シャッター音と共に、切り取られた一瞬の姿。
「目、寄ってる」
「そんな、気にする事じゃねぇよ。」
早く、と良子に手招きされる。
「ちゃんと、撮ってね。」
急いで、みんなの元に行く。
「ごめんね。」
「いいよ。」
優は、こっちと良子と怜の間に入る。
「いい?」
「お願いします。」
「ハイ、チーズ。」
止まる、空気。
その一瞬が、切り取られる。
「いいよ。」
深は、撮ったばかりの写真を見せに寄る。
「可愛いね、」
開かれた携帯の画面の中で、自分達が笑っている。
逆行もない、ポジション。
「さすが、良子。ポジション、ばっちりだね。」
「ありがとう。ちゃんと計算しての位置ですからね。」
「やっぱり、風花は目立つね。」
「そう?」
たった、一枚の写真が貴重な思い出になる。
「もう一枚、撮る?」
ふっ、と怜が付けていた腕時計を見る。
「ねぇ、もう十時だし帰らない?」
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