空に手が届きそうだ
さよならの変わりに
「真っ直ぐ、帰るぞ」
「うん、」
いつの間にか、深が扉を閉めて車の運転席に座っていた。
「どうだった?」
「…………。」
優は、何も言えなかった。
「頑張ったな。」
俯く優に、優しく声を掛ける。
「ちゃんと、言えなかった。」
「そっか。」
それ以上は、何も聞かずにただ車を夜道に走らせる。
通いなれた学校の道が、街頭で照らされている。
また、違う景色。
「いつもの所でいい?」
「うん。」
マンションの下にある、専用の駐車場に止める。
「優、着いたぞ。」
「うん、」
ありがとうも言わずに、降りた。
すっかり、変わってしまった空。
閉めた扉にもたれて、見上げた。
「何が見える?」
「夢。」
「夢?」
深も、並んで同じ空を見上げる。
「あれ全部が、私の夢。」
空の、端と端をずっと指で繋げる。
「で、目標。」
「数え切れないな。」
「うん、いっぱいある。」
夜空に、思いを馳せる。
あの、星のようにみんながいつまでも輝いていて欲しいと
そして、それぞれの思いをずっと叶えて欲しいと
「何、考えてる?」
「な~んにも」
ちょっとだけ、体が軽くなって、なんだか言えそうな気がした。
「わかってたけど、寂しいね。」
「また、会えるさ」
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