空に手が届きそうだ
取り上げようと、手を伸ばすと、あまり残ってなかった。

「嘘。美味しかった、優が作ってくれたから」
すっかり、空っぽになったお皿。
「また、なんか作って。」
深は、一口麦茶を飲んだ。

「いいですよ。その変わり深さんの、料理も食べたいな。」
「何が、いい?」
「う~ん……。」
頭の中で、今まで食べて来た料理を浮かべる。

「オムライスに、焼きそば、お好み焼き……。」
「パスタとか、もっとかわいいのにしろよ。」
「深さん、そんなの作ってくれなかった。」
「今度、作ってやるよ。」
「じゃあ、カルボナーラがいいです。」
差し出されたコップに、麦茶を入れる。
「久しぶりだな、こうして過ごすの。」
充分近い距離。
恥ずかしくて、仕方ない。
「気のせいですよ。」
何を考えているか分からない。
「そういや、次行く住所知らない。」
「あっ、忘れてました。」
誰にも、言ってない次の住所。
何も、言わずに行くつもりだったため、忘れていた。
「あとで、必ず教えろよ。」
「はい。」
麦茶を、一口飲む。
「それから、無理だったら、無理だって言う事。」
「えっ?」
急に言われて、言葉が出てこない。
「必ず、会いに行くから。」
「はい。」
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