三日月少年少女
「ハルちゃん、」

 目を覚ますとカボチャ少年がぼくの顔をじぃと見つめていた。周りを見渡すと、サーカスはいつの間にか消えていて、夜空のなか野ざらしの空き地に座っていた。

「ぼく、わすれてた。きみとはじめて会ったあの日にブランコから落ちて死んじゃったんだ。でも、はじめてともだちができたハロウィンの楽しかった夜のことだけ、どうしても忘れられなくて。きみを探しにまちにいったんだ。だけどぼく……、サーカスの外なんか行ったことないから、まよっちゃった」

 少年はうるんだ目を片手でごしごしとこすって、にっこり笑った。

「でも、また会えた」

 パパがハロウィンの夜はしんじゃった幽霊やご先祖さまが一年に一度戻ってくる日って言ってた。もしかして、ハロウィンになるたび、彼はぼくのことを探しに街のなかを歩きまわっていたのかな。そう思ったら、ぼくはきゅうっと胸が苦しくなった。あの日のことがあんまりショックで忘れてしまった自分は、なんて薄情なんだろうって悲しくなった。

「もうサーカスのともだちじゃなくなっちゃったけど、ユーレイでもともだちでいてくれる?」

「うん、ずっとともだちだよ、ユーレイになったって変わらないよ。ぼく、毎年たくさんお菓子用意してきみのこと待ってるから」

 ぼくらはゆびきりをして、抱きしめあった。

************

 こうしてハロウィンのふしぎな迷子騒動は幕を閉じた。
 アリエちゃんが占えなかったのは、彼が幽霊だったからなのか、ぼくに出会えてもう目的地にたどり着いていたからなのか、それは今でもよくわからない。

 来年のハロウィンは絶対一緒にお菓子やごちそうをたべてみんなの家をまわるんだ。

「トリック オア トリート!」って。
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