三日月少年少女
「で、今日はなになに? 未成年たちの話のテーマは?」

 僕らは円卓を三つの椅子で囲んでいたのだけれど、椅子が足りないせいで、ゆりあさんはぐいぐい僕の椅子に膝を掛けて仲間に入ろうとする。

「ゆりあさん、狭いですってー」

「ハルちゃん、レディーに座らせないってろくな男にならないわね」

 君はそういう男にはなっちゃだめよ、とカボチャ少年に言い聞かせている。少年はよくわからないながらもゆりあさんの押しに負けたのか怖かったのか、おもちゃ屋さんにある首ふり人形みたいに必死にうなずいている(うなずかされている)。

「僕、お客ですよー」

「お客が一番だなんて、世の中は持ちつ持たれつよ。お互いさまなんだから、どっちが偉いなんてないの!男は立ってなさい」

「わかりましたよぅ」

 ゆりあさんは今日はお祭りに乗じて少し酔っているに違いない、と思った。そして、僕はなぜかゆりあさんに椅子を譲ってその隣に立っていた。ゆりあさんは満足そうに、テーブルに乗った蜂蜜クッキーが山のように積み上がったお皿に手を伸ばしている。そんな僕らのよくわからない茶番劇を余所に、アリエちゃんはカボチャ少年からもらったチョコレートを手の中で転がしながら、タロットカードを一枚一枚ゆっくりと広げている。

「アリエちゃん、なにかわかった?」

 僕はアリエちゃんの占いの邪魔をしないように、小さな声で話しかけた。けれど、彼女が返してきたのは、予想外の答えだった。

「占えないの」

 その言葉に僕らはお互い顔を見合わせるしかなかった。
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