三日月少年少女
「占えないってどういうこと?」

「わからない」

 アリエちゃんは戸惑いを必死に隠しながら力なく左右に首を振った。その言葉にカボチャ少年は不安そうな声を出した。

「なになに?何の話?」

 ゆりあさんは僕らの会話を聞いていなかったせいか、状況を飲み込めていないようだ。僕とアリエちゃんを交互に見てきょろきょろとしている。僕はカボチャ少年が迷子なことを伝えた。

「そっか。今日はハロウィンで仮装してるから、迷子大量発生の日ね。それで、アリエちゃんには占えなかったって訳?そういうことってよくあるの?私占いはよくわからないけど、」

 言いながら、ゆりあさんは僕のココアまで手をのばして飲み始めた。アリエちゃんは黙って首を振った。占い師が占えないなんて、ケーキ屋さんにケーキがない状態みたいなものだ。アリエちゃんにとっては相当ショックに違いない。

「今日ハロウィンだし、悪魔が邪魔してるのかもよ?そういうときもあるわよ。気にしない、気にしない!」

 ゆりあさんは片手でクッキーを齧りながら、まるで昼下がりにお茶をしながら談笑するご婦人のようなお気楽な空気がある。でも、彼女がいることでカボチャ少年に余計な不安を与えずに済んだのは良かったと思う。

「ん~、他の方法考えよう!あたしがまたあったかいココア作ってきてあげるから。だいじょうぶよ、ちゃんと帰れるから」

 そうカボチャ少年の頭をなでながら言うと、ゆりあさんは席を立って店のカウンターへ消えていった。少年はうん、と安心しきったような声をあげた。僕はふぅ、と一息つくとさっきまでゆりあさんが座っていた椅子に腰かけた。
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