鏡の中の僕に、花束を・・・
「お、これの良さがわかるか?」
「はい、これと同じやつ作った事あるんですが、このアンテナの処理なんか驚嘆に値しますよ。」
一つの模型を指さして言った。
「あぁ、これか?これは真鍮線を・・・。」
五分ほど、ただのアンテナに対して説明してくれた。太田の模型に対する想いが伝わってきた。
「すまん、話しこんでしまったな。どうだ、面白そうか?」
「ですね。」
「じゃ、ここで働いてみないか?と言いたいところだが、一応どれくらい出来るのか見せてもらっていいかな?話しでは結構な腕前とは聞いているんだかね。」
太田は棚から何やら取り出した。
「これは?」
「今、頼まれているやつの部品さ。これの仕上げしてみないか?」
「仕上げって、失敗したらどうするんですか?」
「そん時はそん時さ。納期をズラしてもらうなりするさ。どっちみち、ここで働く事になれば、仕上げは避けて通れない道だからな。そんなに気負うなよ。」
「あ、はい。」
気後れしたが、とりあえずやる事にした。
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