鏡の中の僕に、花束を・・・
黙々と作業した。いつもなら気になる時計の秒針が、今日は全く耳に入って来ない。きっと、彼女がそうさせたのだろう。
「ご飯だよ。」
彼女が作業場のドアを開けた。けど、太田も集中してたのだろう、声にまるで気づかなかった。
すぅ、大きく息を吸った。そして、叫んだ。
「ご飯だよ~!」
「うわっ。」
太田は握っていた筆を落とした。僕はせっかく組んだ部品を落として壊してしまった。
「あぁ~。」
「何よ、それ。ご飯だって言ってるのに、無視するのがいけないんでしょ。そんなに文句言うなら、明日からご飯作ってあげないよ。」
ほっぺを膨らまして怒っている。
「悪かったよ、美園。ただな、ちょうどいい感じに集中出来てたんだよ。なっ、お前もそうだろ?」
僕に同意を求めてきた。ズルい。

「そ、そうなんです。だ、だから、気づかなくて・・・。ごめんなさい。」
「わかればいいよ。でも、次に同じ事したら、絶対に作らないからね。わかった?」
「はーい。」
大きな声で答えた。
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