鏡の中の僕に、花束を・・・
3
「あら、おかえり。早かったわね。」
「・・・。」
何も答えないとわかっているのに、母親は帰って来ると必ずこう言う。それにバイトをクビになったんだから、早く帰って来て当然だ。きっと、それをわかっていて言っているんだ。ムカつく。
「ご飯食べる・・・」
何か言い続けていたが無視だ。僕は自分の部屋に篭った。
ムカつく。ムカつく。ムカつく。
ベットの上で、頭の中で、同じ言葉を繰り返した。しかし、怒りが晴れるわけではない。そのうちに、いつもの考えが浮かんできた。
“死のう・・・。”
それしかない。
踏切の警報器の音に戻る。
目の前を何両もの電車が通り抜けて行く。遮断機の棒を潜り、前へ踏み出せば、僕の願っている世界に行ける。それはわかっている。なのに踏み出せない。
“怖い。”
質量の塊に潰されたらどうなるのだろう。どう考えても、痛いに決まっている。
“怖い。”
足が震えている。カーブミラーに、映っている姿は驚くほどに弱々しい。
“ダメだ。”
結局、今日も適わなかった。なんて、僕は弱いんだ。家に引き返した。
その背中を見て、誰かが舌打ちをしていた。僕が死ぬ事を、いつも期待していた誰かだ。その誰かは鏡の中にいた。そして、恐ろしい決意をした。僕を殺す、そう考えたのだ。鍵が開いてなければ、こう考えていても容易に手を出す事は出来なかったのに。
「・・・。」
何も答えないとわかっているのに、母親は帰って来ると必ずこう言う。それにバイトをクビになったんだから、早く帰って来て当然だ。きっと、それをわかっていて言っているんだ。ムカつく。
「ご飯食べる・・・」
何か言い続けていたが無視だ。僕は自分の部屋に篭った。
ムカつく。ムカつく。ムカつく。
ベットの上で、頭の中で、同じ言葉を繰り返した。しかし、怒りが晴れるわけではない。そのうちに、いつもの考えが浮かんできた。
“死のう・・・。”
それしかない。
踏切の警報器の音に戻る。
目の前を何両もの電車が通り抜けて行く。遮断機の棒を潜り、前へ踏み出せば、僕の願っている世界に行ける。それはわかっている。なのに踏み出せない。
“怖い。”
質量の塊に潰されたらどうなるのだろう。どう考えても、痛いに決まっている。
“怖い。”
足が震えている。カーブミラーに、映っている姿は驚くほどに弱々しい。
“ダメだ。”
結局、今日も適わなかった。なんて、僕は弱いんだ。家に引き返した。
その背中を見て、誰かが舌打ちをしていた。僕が死ぬ事を、いつも期待していた誰かだ。その誰かは鏡の中にいた。そして、恐ろしい決意をした。僕を殺す、そう考えたのだ。鍵が開いてなければ、こう考えていても容易に手を出す事は出来なかったのに。