鏡の中の僕に、花束を・・・
「ふふふ・・・。」
完全に嫌われた。そう思った。
「もしかして、待っていてくれたの?」
「え、あ・・・。うん。」
隠していてもしょうがない。正直に答えた。
「そうなんだ。」
これはどう言う意味なんだ?彼女の気持ちがわからない。
「嫌だよね?」
上目遣いで確認するように聞いた。
「なんで、そう思うの?」
「だって、一時間以上もここで待ってたんだよ。普通、気持ち悪いとか思うよね?」
「私も気持ち悪いって思ってるって?」
「あ、うん。そう、思いたくないけど、普通はそうだよね?」
彼女は少し怒ったような表情になった。僕の意見は的外れではなかったらしい。
「ひどいね・・・。」
「本当にごめんね。」
どんなに言い訳しても許してもらえるとは思っていない。このまま、彼女も仕事も失うのだろう。また、元の何もない僕に戻るのだろう。元に戻るだけなのだ。なにも哀しい事はない。ないはずだ。それなのに、僕の心は今にも泣き崩れそうだ。
「ひどいねって、意味わかってる?」
彼女は聞いた。
「こんな気持ち悪い事をした事にでしょ?あらためて自分で考えてみても、気持ち悪いと思うよ。だから、謝っているんだ。本当に、本当にごめんね。」
「わかってないよ・・・。全然、言葉の意味わかってない。」
「?」
「私は待ってた事を言ってるんじゃないよ。」
「じゃ、何?」
「わかんない?千代田君が待ってたのを、気持ち悪いとか思ってたって言ってたでしょ。それがひどいって言ったんだよ。」
「そうなの?」
「本当に女心わかってないな。」
「ごめん。女の子と付き合ったりした事ないから・・・。」
「そっか。じゃ、はっきり言わないとね。好きな男の子が待っててくれて、嫌な女の子なんていないよ。」
一瞬、何を言ってるのかわからなかった。それから大声をあげた。
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