鏡の中の僕に、花束を・・・
「うぐ。」
思わず口から出た。前の人の鞄が、僕の腹に当たるのだ。苦しい。けど、駅につかなければ体制を変える事すら出来ない。ひたすら堪えるしかなかった。
混雑ぶりに、車内に冷房が入った。それでも熱気は改善されない。それはもの凄い混みようだった。
乗り換えの駅まではまだある。途中いくつかの駅に停車したが、あまり需要のない駅なのだろう、ほとんど誰も降りない。逆に停まった駅から、わずかではあるが乗客が増え、混雑に輪をかける始末だった。
鞄の痛みに堪えるため、僕は遠くを見ようとした。窓に映る景色を眺めれば、少しは気が紛れるかも知れない。そう考えての事だ。
「う、うう。」
半ば無理矢理体を動かし、窓の外を見た。海だ。ドリームランドは、海沿いにあるとは聞いていたが、まさか途中から海が見えるなんて思いもしなかった。窓に映る僕越しの海が、僕の痛みを和らげてくれたように感じた。
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