鏡の中の僕に、花束を・・・
「くそっ!放せってば。」
「放さない・・・。放さない・・・。」
「は、話した?!」
たどたどしい口振りだが、確かに話した。こいつは何なのだ?
「う、うわっ。」
話した事に驚いたせいだ。僕の力が緩んだ。そして、手首が鏡の中に攫われた。
「う、うわわわあっ。」
信じられないほどに冷たい。真冬の凍った湖にでも落ちた気分だ。鏡の中の手首の血色が、みるみる悪くなっていくのがわかる。
僕は懸命に、右手も左手に添えて引いた。奴は右手しか使っていない。これならいける。
「は、は、放せよ!」
勢いよく、僕は後ろに飛んだ。鏡の中から抜け出たが、思い切り頭をぶつけた。しかし、痛みはない。あるのは、左手のジンジンとした感覚だけだ。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・。」
鏡を見た。ただ、僕はしゃがんでいるから、映っているのは天井だけだ。
「なんだったんだ?」
その場で立ち上がるのは、怖くて出来なかった。また、奴がいるかもと思ったからだ。そっと、腰を屈め洗面所を出た。
この時、後ろを振り向いてはいない。だから、知らなかった。いや、知らない方が良かっただろう。なぜなら奴が、鏡の中の僕が、恨めしい顔で見ていたからだ。
「放さない・・・。放さない・・・。」
「は、話した?!」
たどたどしい口振りだが、確かに話した。こいつは何なのだ?
「う、うわっ。」
話した事に驚いたせいだ。僕の力が緩んだ。そして、手首が鏡の中に攫われた。
「う、うわわわあっ。」
信じられないほどに冷たい。真冬の凍った湖にでも落ちた気分だ。鏡の中の手首の血色が、みるみる悪くなっていくのがわかる。
僕は懸命に、右手も左手に添えて引いた。奴は右手しか使っていない。これならいける。
「は、は、放せよ!」
勢いよく、僕は後ろに飛んだ。鏡の中から抜け出たが、思い切り頭をぶつけた。しかし、痛みはない。あるのは、左手のジンジンとした感覚だけだ。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・。」
鏡を見た。ただ、僕はしゃがんでいるから、映っているのは天井だけだ。
「なんだったんだ?」
その場で立ち上がるのは、怖くて出来なかった。また、奴がいるかもと思ったからだ。そっと、腰を屈め洗面所を出た。
この時、後ろを振り向いてはいない。だから、知らなかった。いや、知らない方が良かっただろう。なぜなら奴が、鏡の中の僕が、恨めしい顔で見ていたからだ。