鏡の中の僕に、花束を・・・

目の前はオレンジだった。
「出口だ。」
僕たちはオレンジに向かって走った。
「はぁ、はぁ、はぁ。」
「や、やっと出られたね。」
「だね。」
はじめ嬉しかったオレンジも、すぐに目にうるさく感じた。
「眩しい。もう、日が暮れたんだね。」
「だね。どれくらいあの中にいたんだろ。まるで、探検から帰って来た気分だよ。」
僕は時計を見た。
「時計、また、右手に戻したの？」
「うん左利きだからね。」
「じゃ、痒いの治ったんだ。良かったね。」
「あ、うん。」

オレンジは短い。すぐに月と星がその姿をハッキリとさせて来た。
「あれ、もう終わりなんだ。」
終了のアナウンスが聞こえてきた。どうやら、このあと何かのイベントが行われるらしい。それで貸切りになるから、一般の客は帰れと言う事らしい。
「せっかく来たのに・・・。残念だな。」
そう言う割には、彼女はあまり残念そうな感じがしない。
「でも、まっいいか。うちに来てくれるんだよね？」
彼女は僕の腕にしがみついて来た。
「えっ？」
奴がそんな話をしたのだろうか。目的はなんだ？
「あれ？忘れてる？ひどいよぉ。」
「ううん、忘れてないよ。たださ、もっとここにいるものだと思っていたからさ。」
「だって、アナウンスでダメだって言ってるでしょ？しょうがないよ。」
どうやら、彼女は僕が家に来る事の方が、このドリームランドで遊ぶよりうれしいようだ。それはそれでうれしい。が、もとは奴が言った事だ。油断は出来ない。彼女が狙いだとしたら、少しでも一緒にいて護ってあげたい。
「だね。じゃ、行こうか。」