( 新撰組 * 恋情録 )

 「 ‥普段ならそうしたって構わねぇ。
  だがな、自分の体調を考えろって
  言ってんだ。数日前に倒れた
  野郎は、一体何処のどいつだ?あ? 」

 「 ‥それは確かに私ですけど 」



 総司の顔から、完全に笑みが消え
 目付きは真剣なものへと変わる。



 「 もう、大丈夫ですから 」

 「 ‥大丈夫な訳ねぇだろうが 」

 「 私の事は一番良く私が分かってます 」



 私が大丈夫と言ったら大丈夫なんです。
 と続け、完璧な笑みを浮かべる総司。

 その笑みの裏にある真意は、
 決して読み取れない。



 「 それに 」



 少しだけ表情を変化させて
 総司は尚も続ける。



 「 きっと凜咲は、私との会話を
  望んでいる。そして私も―‥
  同様に、彼女と話したい。
  ‥それは、私が彼女の傍に
  居る理由にはなりませんか? 」



 ――僅か。極僅かに悲哀の色を
 その表情に貼り付けて。
 総司は、笑った。



 ( ‥何で、お前らは )



 同じような顔して笑う?

 同じような悲哀の色を滲ませる?



 その問いの先には、未だ俺の知らない
 真実が潜んでいる気がして―――



 「 ‥‥‥勝手に、しろ 」



 自分でも出所の分からない悔しさを
 乱暴な声色に滲ませて。

 俺は二人を残し、部屋を出た。
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