( 新撰組 * 恋情録 )

 否、歴史が凜咲を消そうとしている―‥
 そう表現した方が正しいだろうか。



 俺は 昨日脳裏に浮かんだ仮説を
 再び反芻する。



 本来なら、この時代に存在しない―‥
 存在してはいけない筈の異分子。
 則ち凜咲はきっと、此処に居るだけで
 少しずつ、少しずつ‥歴史を、
 その流れを歪めている。

 歴史に意志が有ると言うのなら、
 奴はきっとその歪みを嫌う筈だ。

 躍起になって、原因となっている
 異分子を探し出し、
 取り除こうとする。

 そしてそれは、凜咲の消滅を
 意味する―‥



 ( ま、まさか、な‥ )



 仕事で目が疲れてただけだ。
 大体、歴史に意志なんかねぇよ。



 様々な否定の言葉が、
 浮かんでは消えていく。



 ―――だから、有り得ねぇ。
 凜咲が此処から居なくなるなんて
 有り得る訳ねぇだろ‥?



 何より、自分が信じたくなかった。
 有り得ないと思いたかった。





 ―――ジジ、と。





 ( まだ、出会ったばっかじゃねぇか‥ )



 例の音が、耳を突き抜ける。

 俺の意志とは裏腹に、疑惑は確信へと
 変わりつつあった。

            ・・→ 凜咲side

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