( 新撰組 * 恋情録 )

 凜咲の帰る場所。

 遠慮なく触れ合えて、抱き締められて。
 きっと誰よりもあいつに近い―‥










 恋仲に。










 俺はなりてぇんだ―‥「 土方さんッ!! 」



 「 ‥‥‥え、 」 



 周りの音など一切聞こえない程自らの
 思考に没頭していた俺の耳に、けれど
 飛び込んで来たのは‥何処か
 焦ったような響きを伴った凜咲の声。



 「 し、正直に答えてね‥? 」



 呆然としている俺を置いて凜咲の
 口から吐き出された問いは、全く
 予想外の代物。



 「 ひ、土方さんって‥その、
  恋人‥とか、いたりするっ‥? 」



 ‥‥‥確実に一瞬、思考が止まった。

 要因は様々‥今丁度関連することを
 考えていたからだとか、あまりにも
 唐突過ぎたからだとか。
 そう問うて俺を見つめる凜咲の目が
 妙に必死めいていて、不覚にも
 心臓が跳ねたからだとか。



 「 え‥‥あ、‥? 」



 自分でも驚く程に狼狽えた俺の頬が、
 徐々に熱を帯びる。



 ちょっと待った。何で頬染めて
 まごついてんだよ俺は、餓鬼か‥!



 心中で己にそう突っ込み、いくらか
 冷静さを取り戻した俺は否定しようと
 凜咲に向き直る。‥すると凜咲は
 一瞬傷付いたように顔を歪め、



 「 ‥そっか‥分かったありがとう 」



 と呟いて顔に笑みを貼り付けた。



 「 は‥? 」



 俺まだ何も言ってねぇけど、と言う
 間もなく凜咲は勢い良く立ち上がり
 襖に手を掛ける。



 「 そ、それだけ!じゃあねっ 」



 そして早口にそう言うと、部屋を
 出て行ってしまう。



 「 お、おい凜咲っ‥?! 」



 俺が慌てて廊下に出た時には、もう
 凜咲の姿は見えなくなっていた―‥

             ‥→ 凜咲side
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