( 新撰組 * 恋情録 )
「 ‥来ないで 」
涙を堪えて拒絶する。
「 断る 」
なのに土方さんは、至極あっさりと
部屋へ踏み入ってくる。
「 来ないでって言ってるのに‥! 」
きっ、と睨んでみたけれど
鬼の副長には全くもって効果なし。
「 ちっとも怖くねぇよ 」
そう睨み返されて終わりだった。
感情はぐちゃぐちゃ。
( もうやだ‥政宗様に会いたい‥ )
そうだよ神様、どうしてあたしを
戦国時代に飛ばしてくれなかったの?
「 どうしてこの時代なの?
こんなことなら‥ 」
こんなに苦しい思いをするくらいなら。
「 戦国時代に飛ばされたかった! 」
きっと政宗様は、あんな意地悪なこと
言わない。中途半端に
優しくしたりしない。
「 ぎゃあぎゃあうるせぇ、落ち着け 」
相手が怒ってる時くらい、
上から目線じゃなくなってくれる。
「 ‥っ 」
―‥暴れるあたしを
押さえ付けようとして、
失敗して倒れ込んで来たりしない。
あたしの目の前には、頬を染めて
視線を逸らしてる、悔しいくらいに
整った顔。
「 ‥悪かった 」
吐息が顔にかかる距離で
囁かれる謝罪の言葉。
( あぁ、やられた―‥ )
拝啓、現代の皆様。
あたし凜咲は、戦国時代よりも
幕末が好きになってしまったかも
しれません。
それも幕末を駆けた新撰組、鬼の副長
土方歳三のことが、好きで好きで
たまらないかもしれないのです―‥