( 新撰組 * 恋情録 )

 「「 ‥‥‥ 」」

 暫く沈黙が部屋を包んで。

 「 ‥悪かった 」

 もう一度紡がれた 心からの謝罪。

 ここまでされて許さない人って、
 本物の鬼じゃない?

 「 あたしこそ、ごめん‥ 」

 小さな声になってしまったけど、
 距離が近いからきちんと伝わった。

 「 ‥夕飯、早くしねぇと無くなる 」

 照れたように顔を背けて
 慎重に立ち上がると、
 土方さんはあたしに手を伸ばした。

 「 食堂迄の道順も、
        一回しか言わねぇから 」

 伸ばされた手をそっと掴んで
 あたしは立ち上がる。

 「 もう迷わないもん‥ 」

 「 どうだか。 」

 土方さんはまた馬鹿にするように
 笑って、あたしの手を引いたまま
 食堂へと歩き出した。

 握った手はひんやりと冷たくて、

 「 ねぇ知ってる?手が冷たい人って
      心があったかいらしいよ! 」

 あたしは誰かの
 そんな言葉を思い出した。
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