( 新撰組 * 恋情録 )
( 恋情想起 )
( 第一想起 )
( 眩しい―‥ )
温かい光を感じて、
あたしは目を覚ました。
「 ん‥ここ‥? 」
回らない頭で思考を巡らし、
やっと思い至る。
( あぁそっか、タイムスリップ‥ )
時は幕末、新撰組屯所―‥
昨日からあたしは、この時代で、
この場所で生きてゆく事になったんだ。
( 朝ご飯のお手伝いしなきゃ )
不思議と、帰りたいという
気持ちは沸いて来ない。
出来るなら、戦国時代に"も"
飛んでみたいとは思うけど。
―‥そう、あたしはここでの
生活を受け入れていた。
( 気になる人も居るし、ね‥ )
なるべく静かに身支度を整えながら、
まだ寝ているであろう彼を見やる。
「 ‥え 」
――漆黒の瞳が、揺るぎ無く
あたしを捕らえていた。
「 起こしちゃった‥?!ごめんなさい! 」
「 構わねぇ。少し前から起きてた 」
どぎまぎしながら謝るあたしを
見つめたまま、土方さんは
起き上がった。
「 まだ寝てても良いのに‥ 」
きっと昨日、あの後遅くまで
仕事を続けてたんだろう。
切れ長の目の下には
くっきりと隈が刻まれている。
「 今から寝たって、大して
変わりゃしねぇよ 」
苦笑を零してから それに、
と言葉を付け加える。
「 お前の料理姿を見とくのも、
面白いかもしれねぇと思ってよ 」
一転して意地悪な笑みに変わる
土方さんを、あたしは軽く睨み付けた。
「 失礼な!料理は苦手じゃないもん! 」
「 それならそれで、楽しみじゃねぇか 」
「 でも見られてると思うと
緊張して失敗するからやめて! 」
「 断る 」
「 馬鹿!意地悪!鬼! 」
「 何とでも言え 」
土方さんはくすくすと笑った後
「 ‥つぅか、早く行かねぇと
調理始まっちまうぞ 」
最もなことを言い出した。
「 にょわぁぁあ! 」
後で行く、と笑う彼を部屋に残し
あたしは大急ぎで廊下を駆けた。