( 新撰組 * 恋情録 )

 ( 大丈夫かなぁ、土方さん‥ )

 あの後舌を冷やしに行ったらしい
 土方さんは、朝食が始まる時間に
 なっても、まだ姿を見せない。

 ( どうしよう、意外と酷い
       火傷だったりしたら‥! )

 あたしは居ても立っても
 いられない思いだった。

 食欲もあまり沸いてこない。
 探しに席を立とうかと思った瞬間、

 「 遅くなってすまねぇ 」

 食堂に凜と、彼の声が響いた。

 「 おぉトシ、構わんよ。今から
    食べ始めようとしていた所だ。 」

 そう笑う近藤さんに有難うと微笑むと、
 土方さんはあたしの隣に
 腰を下ろした。

 「 土方さん、火傷大丈夫‥? 」

 そう尋ねると彼は、

 「 大丈夫だから心配しなくて良い 」

 と、こちらを見ずに答えた。

 『 頂きま―す! 』

 食事が始まっても、あたしの箸は
 なんとなく進まないでいた。

 隣を見ると、土方さんも
 箸が進まない様子で、
 難しい顔をしていた。

 とても声を掛けられるような
 雰囲気ではないので、
 あたしは視線を前に戻す。
 と、何処かの席から声が上がった。

 「 うめ―っ!この味噌汁、
        斎藤君が作ったのか?! 」

 この明るい声は、平助だ。

 「 ‥いや、味噌汁は彼女が作った 」

 話を振られた斎藤さんは、
 あたしの方を振り返る。

 「 凜咲が?!すげぇじゃんお前! 」

 にかっと笑って平助が手を振る。すると、

 「 確かにいつもと違う味付けで旨いな 」

 『 うんうん 』

 そこら中の隊士達から
 そんな声が上がった。

 ( 良かったぁ―‥! )

 嬉しさのあまり軽く涙目なあたしは、
 おかわりまでしてくれる隊士の
 対応に追われ始めた。
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