( 新撰組 * 恋情録 )

 「 ごめんね、お味噌汁
         なくなっちゃった! 」

 「 えぇえ?!くっそ―っ!! 」

 あたしの作った味噌汁は大盛況で
 多めに作ったにも関わらず、
 あっという間に鍋は空。

 「 明日も作るから、そしたら
         またおかわりして? 」

 「 うぅ〜‥わかった‥ 」

 もう三杯目だというのに
 本気で悲しそうな平助の背中を
 苦笑いで見送る。

 ( でもやっぱり、おいしいって
      食べてもらえると嬉しいな )

 席に戻る時そっと窺うと、
 土方さんはまだ難しい顔。

 だけど、味噌汁だけは全部
 飲み干してくれていた。

 それが嬉しい反面、
 やっぱり考え事をしている土方さんが
 心配になってしまう。

 「 あの、土方さん‥? 」

 余計な事だとわかりつつも、
 声を掛けずにいられないのが
 あたしの性。

 「 大丈夫‥?何か、考え事でも‥ 」

 土方さんは何故か驚いたように
 目を丸くしてから、

 「 何も‥ねぇよ 」

 そう言ったきり、口元を押さえて
 そっぽを向いてしまった。

 そんな態度にあたしの心配は
 余計に募るまま。

 そっぽを向いた土方さんの耳が
 ほんのり赤かったことにも。

 口元を押さえたまま
 ぼそっ、と何かを呟いたことにも。

 あたしは全く気付けなかった。
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