( 新撰組 * 恋情録 )

 [ 土方side ]

 心配そうなあいつの顔が、
 浮かんでは消える。何が

 「 何か考え事でも‥ 」

  だ、馬鹿。

 「 お前のせいだっつの 」

 先程と同じ呟きを繰り返す。
 思い出したように、耳がじんわり
 熱くなった。

 ったく‥
 食事の時でさえ、あいつの事で
 一杯か、俺の頭は?

 初めて恋を知った餓鬼じゃあるまいし。
 自分にほとほと呆れる。

 ( 今は‥それどころじゃねぇんだよ )

 長州の不穏な気配。
 次に連中が大きな動きを見せたら、
 それは新撰組のこれからに
 大きく関わる。

 「 ‥そろそろ潮時、か‥‥ 」

 俺はそう呟くと、
 既に朝食は終わり 人気の無い
 がらんとした食堂を後にした。
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