( 新撰組 * 恋情録 )

 「 監察方 」

 そう書かれた部屋の前で、
 俺は立ち止まる。
 そして、襖の奥へ向けて
 声を張り上げた。

 「 山崎、島田!居るか! 」

 「「 はっ 」」

 声が揃ったのを確認してから
 勢い良く襖を開けた。

 「 御用でしょうか、副長 」

 「 あぁ、てめぇら二人に
      仕事だ。それも、特大のな 」

 そう言って口の端を軽く吊り上げると、
 二人は僅かに表情を引き締めた。

 山崎烝、島田魁。
 信用出来る監察方として、
 俺は良くこいつらに仕事を任せる。

 それがどんなに汚い仕事で有ろうと
 文句一つ言わず 俺に着いて来てくれる
 貴重な存在だ。

 部屋に緊張感が漂うのを
 感じながら、俺は凜と声を張り上げる。

 「 今まで泳がせていた桝屋‥
       古高俊太郎を捕縛する。
  監察方は、捕縛に踏み込む
     隊士の援護に全力で当たれ! 」

 「「 はっ 」」

 深く頷いた二人に
 作戦の詳細を伝えた後、
 俺は捕縛に向かわせる隊士を募る為
 多くの隊士が集まって居るで有ろう
 道場に足を向けた。

 しかし道場に近付くにつれ、
 おかしな事に気が付いた。

 ‥稽古中である筈の道場から、
 何故か歓声が聞こえるのだ。

 ( 誰か試合でもしてやがるのか? )

 一喝入れてやろうと思い、
 大きく息を吸って道場に
 足を踏み入れた俺は
 目の前に広がる光景を見た途端
 思わず言葉を失ってしまった。

 「 ‥凜咲? 」

 ―‥そこには、剣豪揃いの新撰組内でも
 随一と称して良い程の総司を前に
 竹刀を構えている凜咲の姿があった。

            ・・→ 凜咲side
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