( 新撰組 * 恋情録 )
実際はそうでもないはずだけど、
竹刀を握ると随分久しぶりのような
感覚に囚われた。
手に馴染むまで軽く素振りを
繰り返してから、あたしは
沖田さんに向き直った。
「 ‥よろしくお願いします! 」
『 凜咲頑張れ―! 』
( な、なんか注目浴びてる? )
深呼吸を繰り返すあたしに対し
『 総司負けんなよ?!負けたら
一番隊組長の名折れだぜ―! 』
「 分かってますよ、 」
余裕の笑みを崩さない沖田さん。
「 ‥はっ! 」
――先に仕掛けたのは、あたし。
沖田さんは軽々とそれを受け止めると
反撃に転じた。
振り下ろされた竹刀は
彼の華奢な体の何処に
そんな力が秘められているのかと
疑う程に重くて、あたしは僅かに
体勢を崩す。
もちろん沖田さんがその隙を
見逃すわけがなくて、すぐに第二撃が
加えられた。
「 っ‥ 」
あたしはすれすれの所でそれをかわすと
一旦後ろに跳んで体勢を立て直した。
「 ‥中々しぶといですね 」
沖田さんの微笑みが
楽しげなものに変わる。
( 長引いたら確実に
体力の無いあたしが負け―‥ )
元々勝てる可能性なんて、
1%もないだろうけど。
あたしは上段の構えを取って
一気に攻めようと踏み込んだ。
すると、中段の構えを取っていた
沖田さんの剣先が僅かに上がり、
右にずらされた。
( ‥?! )
踏み込みの足音が、一度。
風を斬る音が、三度―‥