( 新撰組 * 恋情録 )

 「 礼儀正しい女性は、
         嫌いじゃないですよ 」

 ――思考、停止。

 「 ‥ですから、是非また試合を
          しましょう、凜咲 」

 艶っぽい微笑みでそう締めくくると
 くるりと踵を返したその背中に
 あたしは思考停止による一瞬の間を
 挟んでから 慌てて声を投げた。

 「 おき‥っ、総司!! 」

 「 ‥はい? 」

 振り返った彼は満面の笑み。

 「 暇な時で良いから、その‥
        剣術教えて下さいっ! 」

 我ながら、随分無茶なお願い。
 だけど、純粋に凄いって
 思ったんだもん。
 あんな凄いことができる総司に、
 剣を教わってみたいなとも。

 「 ‥いいですよ。凜咲は筋が良いから
  特別です。それに、狙い通り私を
     呼び捨てにしてくれましたし 」

 人差し指を唇に添えて
 片目を瞑る総司。

 「 っ〜‥この腹黒! 」

 「 褒め言葉ですか、それ 」

 「 ちが―うっ! 」

 剣術でも口喧嘩でも、
 あたしは一生 総司に勝てそうにない。
< 40 / 117 >

この作品をシェア

pagetop