( 新撰組 * 恋情録 )

 「 総司 」

 なるべく平静を装ったつもりだったが
 俺の発した声には明らかに刺がある。

 ( ‥ったく みっともねぇ。 )

 そんな己を叱責してから

 「 はい、何か? 」

 と首を傾げる総司に本題を切り出す。

 「 俺が桝屋喜衛門を名乗る攘夷志士、
   古高俊太郎を泳がせていたのは
     お前も知っている筈だよな? 」

 「 ええ 」

 「 潮時だ。明日の朝、古高を襲撃する 」

 「 ‥随分と急な話ですね 」

 愉しげに笑みを深める総司を
 一瞥してから、俺は更に言葉を紡ぐ。

 「 切り込み隊長は総司、お前だ。
   とは言っても、絶対に殺すな。
   あいつは屯所で尋問に掛ける。
       必ず生け捕りにして来い 」

 「 は―い 」

 捕物をする、という覚悟や緊張が
 微塵も感じられない総司の返事に
 俺は眉間の皺を深くした。

 「 ‥浮かれんな 」

 先程と同様に作戦の詳細を伝え
 去り際に吐いた台詞は、
 自らに言い聞かせているような
 ものだった。

 そう、浮かれてる場合じゃねぇんだ。
 悩んでる場合でもねぇ。

 脳裏にちらつくあいつの影を
 追い出そうと、俺は自らの
 頭を小突き、道場を後にした。

            ・・→ 凜咲side
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