( 新撰組 * 恋情録 )
( 第二想起 )
翌朝―‥
元治元年6月5日、明朝。
昨日と同じように朝食を
作ろうと台所へ向かって駆けていた
あたしは、角を曲がったところで
誰かとぶつかりそうになった。
「 わ、わわわ‥っごめんな‥さい‥? 」
慌てて顔を上げ、目をぱちくり。
「 おはようございます。大丈夫ですか?
あまり走ると危ないですよ 」
浅葱色の隊服を身に纏い、
柔らかく微笑む総司が
あたしの肩を優しく押さえていた。
「 総司?! 」
驚いて見ると、彼の後ろには同じく
浅葱色の隊服を身に纏った
背丈180cm程の巨漢と、
これまた驚くべき美男子。
そして数名の平隊士が、
綺麗に隊列を組んで並んでいた。
「 ど、どこか行くの‥? 」
隊服を着ていることによって
いつもと雰囲気の違う総司に
どぎまぎしながら尋ねる。
「 ええ、監察方の二人や一番隊の数名と
これから任務に行く所です 」
( 監察方‥? )
聞き慣れない単語に首を傾げるが、
任務の邪魔をしてはいけないので
「 そ、そうなんだ‥気をつけてね! 」
と 曖昧に微笑むことしかできなかった。
「 もちろん 」
総司は再び柔らかく微笑むと、
隊士を引き連れて玄関の方へと
向かって行った。
あたしはその様子を暫く見つめて
いたけれど、朝食当番に遅れそう
だという事を思い出し、総司の忠告を
無視して、再び廊下を駆けた。