( 新撰組 * 恋情録 )

 隊士の波に阻まれて 中々
 身動きの取れないあたしが
 追い付くより早く、斎藤さんは
 とある部屋へと姿を消してしまった。

 そして、あたしがその部屋の前に
 辿り着いた時には 大勢の隊士達も
 既に移動を終えたようで、
 辺りは しん、と 静まり返っていた。

 もう今更 部外者であるあたしが
 部屋の中に立ち入るなど
 できそうにない。

 「 部外者 」 という自分の考えに、
 胸がツキンと痛んだ。

 襖の向こうからは、緊迫した声が
 漏れている。

 無作法だとは分かりつつも、
 あたしはそっと襖に耳を押し付けた。
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