( 新撰組 * 恋情録 )

 「 土方、さん‥ 」

 「 こんな所で盗み聞きか?
       ‥良い度胸じゃねぇか。 」

 細められた漆黒の瞳は、
 あたしをじっと見つめている。

 探るような目付きは、前にも一度
 あたしに向けられたもの。
 部外者を排除しようとする、
 鬼の目―‥

 あたしは蛇に睨まれた蛙のように、
 動くことができない。

 「 ‥お前には関係無い。
           部屋に戻ってろ 」

 冷たい声に滲むのは、
 はっきりとした拒絶の色。

 ( あたしは関係ない、部外者なんだ‥ )

 「 はい、ごめんなさい‥ 」

 着物の袖をぎゅっと掴んで
 頭を下げ、くるりと反転して
 そのまま来た道を戻った。

 滲んできた視界に、
 何度も躓きそうになりながら。
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