( 新撰組 * 恋情録 )

 「 俺が四国屋へ向かう。近藤さんは
        池田屋に向かってくれ 」

 「 あぁトシ、分かった。しかし、
       今俺の隊で動けるのは‥ 」

 「 あぁ、分かってるさ 」

 今新撰組内では 体調不良を
 訴える隊士が続出しており、
 今晩池田屋及び四国屋に向かえる者は
 各隊数える程しか居ないのが現状。

 「 本当は近藤さんの隊に、
  二十も三十も護衛を付けたい
  位なんだがな。そうも言って
  られねぇ。そっちには総司を付ける 」

 指名された総司は顔を上げ、
 緩く微笑んだ。

 「 近藤さんの命、預からせて頂きます 」

 「 ‥頼んだぜ 」

 やりとりを聞いた近藤さんが
 困ったように声を上げて笑う。

 「 トシ、俺は大丈夫だ。それに、
  新撰組の局長ともあろう者が
  何人も護衛を付けて居たようでは、
  相手にも格好が付かないではないか 」

 「 そう言ったからには、
    死ぬんじゃねぇぞ?大将さんよ 」

 あんたが居てくれなきゃ、
 新撰組は始まらねぇんだ。

 だからこそ、四国屋が " 当たり " で
 あって欲しいと願う。

 「 それでは全員、出陣準備! 」

 そして、どちらが当たりだろうと
 今夜が新撰組にとって重要な夜、
 戦である事には変わりねぇんだ。

 ‥‥気を引き締めて行かねぇとな。
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