( 新撰組 * 恋情録 )

 新撰組の象徴である、浅葱色の羽織り。
 俺はそれを取りに、自分の部屋へと
 向かっていた。

 部屋にはあいつが居るだろう。
 そう、また俺が
 泣かせちまったあいつが。

 腹を決め、気まずさを覚悟で
 部屋の襖を開ける。

 またいつかのように、
 布団に包まって声を殺してる
 あいつを想像しながら。










 「 ‥凜‥咲‥‥? 」










 ――布団は、もぬけの殻。
 部屋は人の気配さえ感じられず、
 しんと静まり返っている。

 あまりに想像と食い違った情景に、
 俺の足は根が生えたかのように
 動かなくなる。

 「 ‥っ 」

 " 失踪 " の二文字が
 頭の中をぐるぐると駆け巡る。


 俺のせいだ。
 俺のせいであいつが‥‥、
 居なくなる‥――?


 「 凜咲!‥凜咲‥っ‥返事しやがれ! 」

 気が付けば俺は、いつかのように
 あいつの名を呼びながら
 廊下を全力で駆けていた。
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