( 新撰組 * 恋情録 )

 「 凜咲!凜咲、何処だ?! 」

 俺は走る。
 有らん限りの声で叫びながら。

 その声に驚いた隊士達が
 何事かと尋ねて来たが、構わず
 振り切って探し続けた。

 ( 屯所の外に出て行かれたら、俺は‥
  きっと、あいつを見付けてやれねぇ )

 あいつはすぐ道に迷う。
 それは共に過ごした数日間で
 俺が得た数少ない情報の一つ。

 まだ食堂や道場に風呂、自室位しか
 一人で行き来が出来ない。

 そのたった四箇所でさえ、
 呪文の如く道順を唱えながらでしか
 辿り着くのもままならない事を、
 俺は知っている。

 京の町並みは複雑で、
 何も知らない輩が歩き回ろうものなら、
 途端に迷ってしまう。

 ましてやあいつの事、文字通り
 路頭に迷い、最悪の場合―‥





 " 死 "





 その一文字が、俺の身を震わせた。

 もしも運良く誰かに拾われ、
 最悪の事態を避けられたとしても。





 「 ‥俺が、気に食わねぇ。 」
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