( 新撰組 * 恋情録 )

 ――あたしは今、最高に混乱してる。

 額が熱い。
 土方さんの腕が熱い。

 全身も次第に熱を帯び始める。

 ―‥なんであたしは、
 抱き締められてるんだろう。

 あたしは確か、泣いてて。
 土方さんは、怒ってて。

 逃げ出して。走って走って。
 迷って辿り着いた、綺麗な縁側。

 屯所にこんなとこがあったんだ、って
 一目で気に入って。

 それから柱に寄り掛かって
 泣いてる内に、疲れて寝ちゃって。

 目が覚めたら、怒ってるはずの
 土方さんが居て。
 あたしは温かい腕の中。

 「 土方さん‥? 」

 「 ‥何 」

 「 怒ってないの‥? 」

 「 ‥すげぇ怒ってる 」

 あぅ。
< 58 / 117 >

この作品をシェア

pagetop