( 新撰組 * 恋情録 )

 「 あたしは‥あたしはっ! 」

 突然の大声に驚いたのか
 土方さんの肩が僅かに跳ね上がり、
 瞳は驚いたように見開かれた。

 「 " 向こう " では、全然幕末とか
  新撰組に興味なんてなくて‥っ!
  だから土方さんの役に立つような
  情報は、正直全然持ってないよ‥ 」

 一息でそう言い切ると、彼の瞳は
 残念そうな、でもどこと無く
 安堵しているようにも見える、
 不思議な色に変わった。

 「 ‥でもっ! 」

 あたしはもう一度声を張り上げる。

 「 でも今は、土方さんに‥
  新撰組に会って、此処が大好きに
  なって‥!だから、もっと新撰組を、
  皆を知りたいって‥
        そう思って、それで‥ 」

 だめだ、言いたいことまとまんないよ‥
 これじゃただの言い訳じゃん‥

 あたしの両目からは、たくさん流して
 涸れたはずの涙が 再び零れていた。

 「 それで‥っ 」





 ―‥ふわ





 「 もう良い。もう良いから一旦喋んな 」





 子供をあやすような優しい声と同時に、
 あたしは土方さんの胸に
 引き寄せられていた。
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