( 新撰組 * 恋情録 )
( 来る‥っ! )
――カキンッ
闇に二つの白刃が踊る。刀身同士が
ぶつかり合い 火花を散らせる中、
「 名を名乗れ! 」
土方さんの声が 静まり返った辺りに
凜と響く。
「 っ‥その声‥!副長!
俺です。山崎です! 」
それに対して相手は、酷く慌てた声で
そう名乗った。
「 山崎‥?! 」
あたしが慌てて提灯を翳すと、
闇に浮かび上がったのは
今朝総司達と一緒に任務に行くと
屯所を出た、監察方の内の一人‥
忍みたいな漆黒の衣装に身を包んだ、
例の驚くべき美男子だった。
「 お前が此処に居るって事は‥! 」
「 当たりは池田屋です! 」
――どくん。
「 っ‥、今すぐ隊士達を応援に
向かわせる!お前が先導してくれ 」
「 はっ 」
――どくん。
「 あ‥っ 」
体中から血の気が引いていく
感覚と共に、あたしはまた不吉な動悸に
見舞われた。
地面に膝をつくようにして
崩れ落ちたあたしに
土方さんが駆け寄って来る。
「 おい、凜咲?!どうした! 」
「 あ‥ぅ‥土方さん、あたし‥ 」
( 行かなきゃ‥っ! )
池田屋が当たりだと聞いた瞬間、
脳裏を過ぎった一つの史実。
「 総司が‥危ないの‥っ! 」