( 新撰組 * 恋情録 )

 ――話は少し前に遡る。

 前述した様に新撰組内で動ける者は
 非常に少ない為、厳しい戦いに
 なりそうだと見た俺と近藤さんは
 会津藩と桑名藩に応援を要請したが、
 会津らの動きは遅く、時刻になっても
 動かなかった。

 ( それが今更のこのこ来やがった‥! )

 出来るなら俺も今すぐ池田屋へ
 駆け付け、剣を振るいたい。

 しかし後からこいつらが乗り込んで
 来た場合に、手柄を横取りされるのは
 火を見るより明らか。

 ならば副長である俺が
 今一番すべき事は―‥

 こいつらを、止めること。

 ( こっちだって命懸けてんだ。
  そう易々と奪われて堪るかよ―‥! )

 頑としてでも動かねぇからな、という
 思いを込めて もう一度睨み付けると、
 観念したように 応援部隊は
 道の端に寄り、腰を下ろした。

 ( ‥死んでくれるなよ )

 総司の憎たらしい笑顔が
 頭に浮かんでは消える。
 同時に凜咲の泣き顔が見えた気がして、
 俺は はっと目を擦った。

            ・・→ 凜咲side
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